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FUJI ROCK FESTIVAL ’11 (7/31)

7/31(日)、目が覚めたのは8:30くらいだっただろうか。体調がばっちり回復していることを確認し(やっぱりちゃんと寝るって大事)、朝食のバイキングもゆっくりしっかり食べて、トイレも済まし、万全の状態で宿を出る。シャトルバスはそこそこ並んだけれど、昼前には会場入りできた。本当は、朝からハンバートハンバートでゆるやかな一日をスタートするつもりだったけれど、まあ仕方がない。ホテルを出たときに降っていた雨は、会場に着く頃には小降りになっていた。きのうと同じく、昼からは少しずつ晴れてくる、そんな気がする。

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とりあえずビールを飲んで、移動開始。トクマルシューゴ、コトリンゴ、British Sea Powerをちらり眺めて、またしても偶然会った友人とごはんを食べたりなんかして。気がつけば雨はすっかり上がって、弱いながらも日の光が落ちてくるように…ってのんびりしていると、気がつけば14:30を回ってしまっていた。高田漣を見に、あわてて木道亭へ。

木漏れ日の差し込む木道亭は、何ていうかもう、完璧なシチュエーションと言っていいくらい、素敵な空間になっていた。ヘブンから遠い地鳴りのように小さく響いてくるベース音と蝉の声を背景に、ギター一本とドラム、ってシンプルなセットでのライブ。高田漣の優しく低い声とギター、伊藤大地の落ち着いたドラム、静かに吹き抜ける風、木々の緑、(ときおり現れるよくわからない虫、)すべてがまろやかに調和した、幸福な時間だった。

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次はTinariwenを見るためにヘブンへ向かう。ヘブンはフジでいちばん好きな会場なので、ヘブンに向かう道のりを歩いているだけでちょっとテンションが上がってきてしまう。おまけにいいライブを見たばかりだから、もうるんるんだと言っていい。るんるん気分のまま、ボードウォークの林を抜けてヘブンに入る。瞬間、ぱあっと空が開け、曇り空を抜けて太陽の光が差し込んでくるなかを無数のシャボン玉がふわふわと飛び交っている、って情景が眼前に展開され、一発で心に焼きつけられた。(ああ、まさに天国の景色じゃんこれ、ってちょっとおもった。)毎年一度は、こういう風景に出会えているような気がしていて、だからこそ、フジロックはたのしい。

で、ティナリウェン。頭をターバンでぐるぐるに包んだ、マリ共和国出身の4人のおっさんが、ギター、ギター、ベース、パーカッションでミニマルな反復のビートを刻み続ける。はっきり言ってかなり地味なんだけど、これがまあ、だんだんと癖になってくる感じがあって、素晴らしかった。音に合わせて身体を揺らしていると、少しずつ覚醒していくようで。鳴ってはいないはずの音が、少しずつ聴こえてくる。近くでがんがんに踊りまくっていた女の子が、「砂漠の音楽って、みんなこんな感じなんですかねー?」って言ってきたけれど、どうなのだろう、よくわからない。でも、少なくともティナリウェンの鳴らす砂漠のブルーズは相当かっこいい、とおもった。

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もうそろそろ夕方。グリーンに戻る。この頃から、ああ、今年ももうすぐフジが終わってしまう…ってなメランコリーに胸がきゅんきゅんし始める。トイレに行ったりごはんを食べたりしながら、のんびりとMOGWAIを聴いた。グリーンにふさわしい、大きなスケールの演奏。モグワイの曲ってぜんぶ、静→動、ってパターンだよね…くらいにおもっていた俺も、涼しくて心地いい風とビール、繊細なピアノの音色と轟音ギターのコントラストにはなかなか満足してしまった。で、そのままグリーンに残って、YMOもちょっとだけ見ていく。グリーンは人人人だし、大型のビジョンに映し出される映像には何やらエフェクトがかけれられているしで、さすがに壮観。パフォーマンスは地味だったけれど、かっこよかった。

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そして、ホワイトに移動。Cakeは正直そんなに期待していなかったのだけど、予想以上にエンターテインメントしていて盛り上がりまくるライブだった。ばかばかしいくらいにド派手なオープニングSEからして歓声が上がりまくりだったし、ペットが鳴り響く度に、ヴィブラスラップが「カーッ!」って決まる度に、コーラスが妙にぴったりはまる度に、もうみんな大喜びで。選曲もよかったし(冒頭から”Frank Sinatra”,”Mustache Man”!)、オーディエンスを左右半分に分けてコーラス対決させてみたり、いやー、ほんとにたのしくて、俺も歓声を上げまくってしまった。ウィルコがなければ、今回これがベストのライブだったかもなー、とおもう。自分の周囲には、Cakeを初めて見る、って人も多かったみたいだけど、「あの帽子のおじさんかわいくてかっこいい!」って声が何度も聞こえてきて、おもわずにやにやしてしまった。ジョン・マクレイはひげもじゃでキャップをかぶったまるまるの体系のおっさんだけど、たしかにかわいくてかっこいいのだ。

そうして、ついにこの日の、というか今年のフジロックのハイライト、Wilco。Cakeが終わった瞬間からステージ前方に向かい、先頭集団の群れのなかにスタンバイしてしまったので、他のステージからやって来ているはずの友人たちとはまったく合流できず。どきどき半分、しかしもうこれで今年も終わっちゃうのか…と寂しい気持ち半分で、開始を待つ。

…予想はしていたことだけど、はじめて見るウィルコのパフォーマンスは、やっぱり最高としか言いようがなかった。MCもほとんどなしで、いい曲をいい演奏で聴かせてくれる、っていう、本当にただそれだけのライブなんだけど、つくづく、まっとうにかっこいいバンドなんだなーとおもわされた。曲は『Yankee~』からのものが多かったけど、いや、まあどれも本当にいい曲ばっかりで。”I Am Trying To Break Your Heart”や”Ashes Of American Flags”にはじんわりさせられ、”Bull Black Nova”,”Via Chicag”ではむちゃくちゃに高揚して、”Jesus, Etc.”はみんなで歌って。曲のブレイク毎に、ネルス・クラインがギターソロを弾く(弾きまくる)度に、大きな歓声を上げて。どっししりした、飾らないグルーヴに身体を揺らして。ジェフの甘い歌声を、目を閉じて、吸い込むようにして聴いて。とにかく、本当に心の底から幸せな気持ちになれたライブだった。こういう感覚って、ずいぶんひさしぶりだったような気がする。

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0:00過ぎ、グリーンで最後のライブを見せるThe Musicを横目に、駐車場に向かう(グリーンに残っている人の数は、ほんとに尋常じゃなかった)。ウィルコにすっかりやられてしまった俺は、幸せボケ状態の脳のまま、夜行バスに乗り込み、苗場を後にしたのだった。

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6:00頃、家に辿り着く。物音に目を覚ました同居人が、部屋のなかから「どうだったー?」と聞いてくる。「いやもう、ほんと、最高に幸せ過ぎた2日間だったわー」と答え、自分の部屋に入る。服を脱いでベッドに潜り込むと、強烈な眠気と、幸せな時間が過ぎ去ったあとの、どうしようもない寂しさがどっと押し寄せてきた。


FUJI ROCK FESTIVAL ’11 (7/30)

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7/29(金)、20:00前には仕事を切り上げて、ダッシュで家に帰ってシャワーを浴びて、新宿発の夜行バスに乗り込んだ。隣の席になった兄ちゃんと、どうも今年は雨っぽいですよねー、やーでもちょっとくらいは晴れてほしいっすねー、あしたのファウンテンズとかGラブはぜったい晴れのがいいですよねー、などと話しつつ、苗場に向かう。夏のいちばんのたのしみ、フジロックが今年もやって来たのだ。バスの暗闇のなかで、徐々に実感が湧いてくる。

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7/30(土)5:00頃、苗場に到着。身体がだるい。夜行バスって便利なのだけど、乗っている時間が短すぎるのであんまりちゃんと眠れないのが惜しいところだ。外は残念ながら、がっつりと雨。カップラーメンを食し、トイレを済まし、レインウェア上下に身を包み、タイムテーブルを見ながらにやにやし、1日目からキャンプしている友達の何人かに連絡を取り、こんな雨でもこの会場に来ているって多幸感は失われようがないよねー、などとのたまい、時間を潰す。

会場入りする頃には、雨は少し小降りになってきていた。まずはビールで乾杯し、レッドマーキーでOKAMOTO’Sを4,5曲見る。ドラムとベースがかなり上手くて、気持ちいい。ボーカルははっきり言ってちょっとダサいとおもったけど、でも一生懸命やっている感じは好きだった。

レッドから外に出ると、いつの間にか雨は止んでいた。グリーンステージに移動して、クラムボン。音のバランスはいまいちだったけれど、雲間から少しだけ差し込んできた太陽の光によく似合う、落ち着いて、きらきらとした音楽を聴かせてくれた。”あかり from HERE”ではILL-BOSSTINOがゲスト出演。ラストの”Folklore”は、先日亡くなったレイ・ハラカミに捧げられた。

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適当にお昼を食べて、またビールを飲んで、次もグリーンでFountains Of Wayne。ファウンテンズ見るの初めてだ、わーい、ってるんるん気分でステージ前に向かって歩いていく途中で、高校の友人とばったり出会う。倉敷から友達と車で来ているらしい。やー、お前はこのバンドなら前まで見に来るだろうとおもってたわー、などと言われる。こういう偶然の再会があったりするのも、フジのちょっとしたたのしみのひとつだ。ライブは新譜からの曲が多かったみたいだけど、まあ何しろ安定感のあるバンドだし、1st,2ndの曲はやっぱり最高だしで大いに盛り上がる。”Troubled Times”、よかったなー。

で、友人と別れてまたビール飲みながらグリーンに残って――知り合いとは見たいバンドが被らないことの方が多いので、俺は大抵ひとりで会場を移動する。誰か見つけたら一緒に飲んだり、見たりする、という感じ――、G.Love & Special Sauce。バンドのタイム感がぴったりで、ひたすらに心地いい。こういうバンドが日本にもいて、いつでも気楽に見れたりしたらすごくいいのになー、とか無茶なことをちょっとおもう。

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降ったり止んだりを繰り返していた雨は、この頃にはすっかり上がっていた。グリーンを抜け出して、Little Creaturesを見にフィールド・オブ・ヘブンへ向かう。リトルクリーチャーズって俺はいままでほとんど聴いたことがなかったのだけど、とてもクールなバンドだった。全身白で決めたの3人おっさんが、変拍子だらけの楽曲をばしっばしっと決めていく。パフォーマンスはとてもシンプルだったけれど、曲もよかったし、演奏もかっこよかった。徐々に盛り上がっていく会場の感じにもしびれた。ラストの曲で踊っていたときには、俺の脳内でも結構なドーパミンが出ていたんじゃないかとおもう。

で、こんどはホワイトステージに移動。08年に再結成した、The Get Up Kidsを見る。俺はエモとかにはそんなにおもい入れもないのだけど(高校生の頃、やたらと流行ってたよねー、程度のイメージ)再結成後の曲と、以前のヒット曲が入り交じったステージで、とっても盛り上がった。2曲目の”Action & Action”からモッシュ(ダイブも)が始まり、終盤の”Holiday”ではみんなで大熱唱。ぴょんぴょん跳ねて歌って、あー汗かいたーとおもいつつ、次の”Girls & Boys”のカバーを聴きながらオレンジコートに向かう。

オレンジに着くと、すでにDate Course Pentagon Royal Gardenの演奏が始まっていた。ゲットアップキッズのすぐ後にDCPRGが見れるなんて、いろんなバンドが出てるフェスはやっぱり最高にたのしい!って改めておもわされる。ポリリズムの快楽に身をゆだねて、ひたすらに踊る。”Playmate At Hanoi”,”Catch22″,”Circle/Line~Hard Core Peace”の流れで、最後は溢れんばかりの多幸感に包まれた。このバンドには1時間って持ち時間はどうかんがえても短すぎるけれど、いや、じゅうぶんにたのしませてもらった。

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すっかり夕闇に包まれたヘブンに戻って、Todd Rundgren。会場はさすがに大入りになっていた。座ってビールを飲みながら、トッド御大が名曲を連発するのを聴く、って贅沢を満喫する。御大はなかなかいい感じに丸々とした体形で、でもパワフルに動き回りながら美声を響かせまくっていた。とくに印象的だったのは、ボサノバアレンジされた”It Wouldn’t Have Made Any Difference”。”I Saw The Light”も聴けたし、とてもよかった。ただ、この頃から強力な眠気が全身に重くのしかかってくるようで…。

トイレに行ってごはんを食べて、オレンジでちらりとマーク・リボウを見るも、寝不足のせいか頭痛がひどい。このままだと最後までもたないなー、とおもい、ヘブンに戻って隅っこのベンチでちょっと眠ることに。

目を覚ますと、すでにWidespread Panicの演奏が始まっていた。メンバーはみんな、もじゃもじゃひげのおっさんたちで、いかにもサザンロックやってます、って感じのルックス。このもじゃもじゃおっさんたちが、とにかく延々とグルーヴの波を生み出し続けるのだ。頭痛はまだ残っていたし、足も疲れていたけれど、こういうのを見せられてしまうとやっぱり踊る他ない。演奏のテンションもひたすらに高いので、座ってまったり見る、みたいな気分にはなれないのだ。2,3曲がメドレーのように繋がり(もしかしたらそれで1曲なのかも)、歌→ギターソロ→ギターソロ→ギターソロ→歌→ギターソロ…ってな具合で、落ち着いている暇なんてまったくない。延々と身体を揺らしているうちにちょっとトリップするような感覚にもなる。メロディはかなりダサいが、そこも込みでいい。とにかく疲れたけれど、充実した時間だった。

シャトルバスに乗って越後湯沢まで下り、湯沢ニューオータニに着いたのは2時前くらい。頭痛でくらくらする身体を引きずって風呂に入り、穴に落ちるようにすとんと眠りについた。


豊田道倫@新宿シアターpoo

7月22日、シアターpooにて豊田道倫のライブ。シアターpooに来るのはたぶん2年ぶりくらいだろうか。会場に向かいながら、甲州街道の沿いの景色のぐちゃっとした感じや、雑居ビルのぱっとしない鉄の階段を上る感じがなんか好きだな、とずいぶんひさしぶりにおもった気がする。でも、シアターpooの狭くて薄暗い会場の静けさや、少し湿った空気は相変わらずで、俺はここで何をやっているんだろう…なんて気分になるのは以前とぜんぜん変わらないようだった。

演ってくれた曲は、もうちょっと記憶が薄れかけているのだけど、”まぼろしちゃん”、”新宿”、”POP LIFE”辺りがよかった。俺は『ギター』ってアルバムが特に好きで、このアルバムに入っている曲を聴くとほとんど反射的にセンチメンタルな気分になってしまうのだけど、”まぼろしちゃん”のかすれたような歌声には、やっぱりぐっときてしまった。あとは、新曲の”おっさんおばはんイリュージョン”って曲が凄かった。曲間の喋りは相変わらずの毒舌――でもあんまりよく聞き取れない――で、会場はいつものようにふしぎな空気に包まれていた。おもしろいことを言うとかじゃないのだけど、どことなく可笑しい、ってふしぎな雰囲気になるのだ。

豊田の歌を聴いていると、いつも自分の生活のことをかんがえさせられてしまう。いままでの生活と、これからの生活。まあ何とかなるだろうという楽観と、なるようにしかならないよな、って諦念。おもい返してみればあの頃は幸せだったのかもなー、なんてノスタルジアや、いまの自分を振り返ってみたときの憂鬱。そんな、音楽そのものとはあまり関係なさそうな自分のいろいろが頭のなかをぐるぐると回り、気がつけばちょっと意識が飛んでいたりもする。音楽を聴いていろいろとかんがえてしまう、ってのは別に珍しくも何ともないことだけれど、豊田道倫のライブは、いつも俺にそれを強制させるのだ。ただ、それはそう悪い感じではない。というか、俺は本当はそういう感覚をこそ求めて彼の歌を聴きに行っているのかもしれない。なんとなく、そんなことをおもった。

ギター


『マン・オン・ザ・ムーン』

マン・オン・ザ・ムーン デラックス版 [DVD]

DVDで。米コメディアン、アンディ・カウフマンの生涯を取り扱った映画。ふしぎな印象のタイトルは、やはりアンディ・カウフマンをモチーフとしたR.E.M.の曲(超名曲!)から取られている。いわゆる伝記映画、と言っていいとおもうのだけれど、多くの謎に包まれたアンディの人生を描きつつも、その謎のベールを剥がそうという訳ではなく、彼のふるまいの不可解なところ、神秘的なところをそっくりそのまま作品に封じ込めた、という感じになっているところがいい。

で、そのアンディなのだけど、はっきり言って、彼はかなり独特なアイロニーの持ち主である。まるまる一晩かけて『グレート・ギャツビー』を全編朗読するだけのネタとか、あらかじめ観客のなかに仕込んでおいたさくらに自分の芸へのブーイングをおもいっきりかまさせたりだとか、テレビのトークショーで台本にない乱闘騒ぎを起こしたりだとかって、なかなか強烈な芸風のキャラなのだ。いや、それだけならまだしも、本当に問題なのは、「アンディのふるまいのどこまでが本気でどこまでが演出(ネタ)なのか、誰にもはっきりとはわからない」という点だろう。

アンディの本心は、観客にはもちろん、共演者やプロモーターにすらはっきりと知らされることはない。まったく客に媚びることはない、ってどころか、客の求めるものを提供しようという気持ち自体がないみたいで、あいつはいったい何をかんがえてるんだ!?って、周囲の人間は困惑し、不安な気持ちにさせられることになる。アンディのような存在は、いったいどれだけの人に受け入れられるのか?いや、そもそも彼は、受け入れて欲しいなどとおもっているのだろうか??

ほとんど誰にも理解されないようなきわきわの笑いだけを追求する、アンディの姿は滑稽で痛々しいのだけれど、どこか清々しくもある。それは、どこまでも空虚で無意味なものに拘泥しているように見える彼が、やはりそこでたしかな輝きを放っているからなのだろう。その輝きは、周囲を顧みず何かを一途に追い求める者だけが放つことのできる輝き、たとえば『レスラー』や『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』、『イントゥ・ザ・ワイルド』なんて映画の主人公たちの放っているそれと同質のものであるようにもおもえる。

この映画で描かれるアンディの姿を通して、観客は人間というものの空虚さを改めておもい知らされるような気分になる。だが、それは同時に、そんな空虚さの内からときおり生まれ出る、ほんの一瞬だけ辺りを照らし出す火花のような輝きを知ることでもある。”本当の自分”なんてものはどこにもないし、生きることはひたすらに無意味で、どこか空しい。でも、それはそれでいいのではないか?空虚や無意味さのなかにも高揚があり、美しさがある。意味や解釈のその先にある、言葉にならない豊潤さみたいなものを、アンディは目指していたのかもしれない、そんな風にもおもう。


SUMMER SONIC 2010

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海浜幕張に着いたのは12:00頃のことで、友人とふたり、カプリチョーザで気持ち悪くなるくらいピザとパスタを詰め込んでからのんびりとメッセに向かった。外はまさにフェス日和、って感じに日差しが降り注ぎまくる完璧な晴天だったけれど、屋外のステージに行く予定のいっさいない自分たちには、あまり関係ないことなのだった。

まずはてきとうにあちこちのステージを見て回る。Two Door Cinema Club、Biffy Clyro、Delphicなど見てみるも、なんだかどれもいまひとつぐっとこない。最近のUKの若手バンドにまったく興味を失ってしまっている自分をあらためて実感する。そうして気がつけばもうそろそろ夕方。ま、この辺からが本番だもんね、って気分を盛り上げて、ソニックステージに向かった。

●Passion Pit

duoで単独を見たときに、まあ悪くはないけど、CD以上のものがあるかって言ったら別にないよな…とおもってしまったのだったけど、今回もまったく同じ印象。曲は悪くないものの、全体的に一本調子で、ちょっと退屈してしまう。でも、周りはすごい盛り上がっていたし、予習ゼロの友人も、かなりたのしかった!って言っていたから、単に俺が飽きてしまっているだけなのかも…。あー、でも、”Sleepyhead”はやっぱりいい曲だったな。

●Richard Ashcroft & the United Nations of Sound

一緒に回っている友達と、今年のサマソニは懐メロ大会だよねーなんて話していたのだけど、我らがカリスマ、リチャード御大はそんな後ろ向きな気持ちを吹き飛ばすようなパフォーマンスを見せつけてくれた。

坊主頭(!)で登場した御大とバンドは、”Are You Ready?”,”Born Again”など新作からの曲を次々にプレイ。予習として聴いていたときは、いやー、またベタなメロディの曲を持ってきたなー、くらいにおもっていたのだけど、いや、なんだかそのどれもがなかなかかっこよく聴こえてくる。安定したリズム隊もいいし、ブルージーなワウギターもいい。で、リチャードの独特なねっとりとしたボーカルもやっぱり素晴らしい。何なんだろうこれは、現役感、現役の勢いがある、ってことなのかな。ヴァ―ヴの”Lucky Man”も途中で演ったけど、他の曲とのあいだに違和感はなかったし。

途中でリアム・ギャラガーに電話してみたり(いったいなぜ…しかも奥さんが出ちゃったし)しつつも、バンドは新作から5,6曲をプレイ。どれも曲としてはまあふつう、って印象なのだけど、演奏はかっこよかった。

そうしてラストは、”Bitter Sweet Synphony”。まあこのイントロは魔法のようなものなので、当然、超盛り上がった。…というか、俺の周りでは涙を流している人すらちらほら。この曲、初期ヴァ―ヴのサイケデリックな曲たちとはだいぶ齟齬がある気がするけど、リチャードの新作とは方向性が似ているので、きっと今後もずっと演ってくれるはず。

個人的には、ヴァ―ヴのアルバムはどろっどろにサイケな1stが最高だとおもっているので、こっちの方向にはあまり興味を持っていなかったのだけど、生リチャードにはすっかりやられてしまった。新作、ちゃんと聴いてみなくちゃなー。

●Smashing Pumpkins

たぶん多くの人たちと同様に、オリジナルメンバーがビリー・コーガンひとりのスマパンなんて…と、あまり期待はしていなかった俺だけど、いや、彼らもまた、予想外に素晴らしいライブを見せてくれたのだった。

おっ!と始めにおもったのは、へヴィにアレンジされた”Ava Adore”のとき。ベースもツインギターもすごくいい。なんていうか、若いバンドが持っているような、強引な勢いがあるのだ。で、特に目が行くのがハチマキをしたドラムの少年!さすがジミー・チェンバレンの代わりをやるだけあって、すごくセンスを感じさせるプレイだった。ブラストビートもいけるし、エイトとかシンプルなところもなんかいちいち上手い。オリジナルメンバーはビリーひとりとはいっても、いまのスマパンはちゃんとこの4人のバンドになってるのかもなーとおもわされた。

セットリストは新旧の曲を縦横に織り交ぜたものだったけれど、どの曲もへヴィで暑苦しいのが素晴らしかった。”Bullet With Butterfly Wings”,”Today”,”Tonight,Tonight”,”1979″などなど、みんなが聴きたい曲はだいたい演ってくれたんじゃないか、ってくらいでもう大満足。で、アンコールに出てきたビリーは、「みんな10年のあいだスマッシング・パンプキンズを信じていてくれてありがとう。最後の曲は、ロックの力についての曲、ロックの力を信じることについての曲だよ」なんて発言。往年のファンはおもわず目頭が熱く…ってところで、あのイントロが!この日のハイライトを選ぶなら、俺はこの瞬間、”Cherub Rock”の始まる瞬間を迷わず選択するけど、こいつはもうとにかく最高だったとしか言いようがない。まさかいまになってスマパンにこんなに興奮するとはおもいもしなかったけど(たぶん高校生のとき以来、ちゃんとアルバム通してなんて聴いてない…)、10代の頃に好きだった音楽って、身体のなかに染みついちゃってるんだなーとつくづくおもったのだった。

●Pavement

深夜ステージ。リチャードもスマパンもよかったけど、いよいよここからが本番だ!って気持ちで見た。どの曲も最高で、もう二度と見れないのかとおもうとひどく悲しい気分にもなったけれど、おっさんになってもペイブメントはやっぱりペイブメントで、よれよれしていてあんまりぱっとしなくて、でもすごくかっこよくて、ロックだった。

自分的ハイライトは、”Stereo”,”Shady Lane”辺り。”Summer Babe”を聴けなかったのだけが心残りだったけど、でも、最高のライブだった。高校生の頃、バンドやるならきっとこういうバンドをやるんだ!ってかんがえていたのをおもい出したりしてしまった。

●Atari Teenage Riot

ペイブメントのまま前線に残っていたのが間違いだったのだけど、ここですべての体力を使い果たしてしまった。ATRのライブって、ほんとに暴動みたいなのな!しんどいーあついーとおもいつつも、客席ダイブしてきたアレックにはしっかりタッチしてしまったり。

●Freebass

そして誰もが待っていたに決まっている、フリーベース!…いや、じっさい客の入りはもう少なくて(だって、ライブが始まったのがAM3:00とかなのだ)、かなりアットホームな雰囲気になっていたとおもう。フッキーはハイポジでメロディーを弾き、マニはしっかり低音をおさえる、って感じの役割分担になっていて、ベース2本とはいえ、とくに真新しかったり実験的だったりということはなく、ふつうに抒情的で渋めなUKロックになっていた。ボーカルは元Havenの人だった。

アンコールでは、フッキーがボーカルを取って、Joy Divisionの”Transmission”,”Love Will Tear Us Apart”をプレイ。こんなの、盛り上がるに決まってるじゃんねー、ずるいなー、なんて一瞬おもってしまったけど、次の瞬間には喜びのあまりがんがんにジャンプしている自分がいた。ま、この2曲が断トツで素晴らしかったのは間違いない。

 ※

深夜ステージを見終わって、ソニックステージ後ろの床にごろり転がって眠って、始発で帰った。どれもすごくいいライブだったけど、俺はもう最近の若いバンドに興味なくなっちゃってるんだな…としみじみおもわされたのが今回のサマソニだった気がする。リチャード、スマパン、ペイブメント、フッキーにマニ、ってほとんどみんな90年代が最盛期だったバンドの人たちだし、自分にしたって、彼らの音楽が本当に大好きで熱心に聴いていたのは高校生の頃なわけだし…。ああ、こうして人はおっさんへと近づいていくのかも…。


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