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Tulipa Ruiz@青山スパイラルレコーズ

先々週の土曜は、BOSSA AOYAMA 2012(08年から毎年青山で開催されているフリーライブイベント。原宿教会とかフランフランとかスパイラルレコーズを会場に、タダでボサノヴァのライブが聴ける。あと、ワークショップとかトークショーとかもある)に行ってきた。今年は、サンパウロ出身のシンガーソングライター、トゥリッパ・ルイスのライブがとくによかった!ので、その感想をかるく書き残しておくことにする。

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トゥリッパは、とにかく身体がでかくて丸々としていて、一度見たら決して忘れられないであろう強烈な存在感の持ち主だった。黒いスパンコールのドレスを着ていて、なんていうか、森公美子的な風貌である。そしてめちゃめちゃ愛想がいい。気さくなねーちゃんという感じで、モレスキンの手帳を見ながら日本語であいさつしたり、歌いながら(巨体を揺らしながら)観客席の奥のほうまでずんずん入って来てはハイタッチしたり、レコード会社の担当の伊藤さんっておっさん――なぜかベイスターズのブルーのTシャツを着ていた――と日本語でデュエットしちゃったりもする。

彼女のボーカルは、声色と声量の振れ幅がものすごく大きい。マイクと口との距離をいろいろに変えながら、ピアノとフォルテとをなめらかに行き来する歌声が小さなホールに響き渡っていくのは、かなり心地よかった。あと、彼女の表現力やグルーヴ感は、イベントに出演していた他の日本人シンガーたちとはまったく別種のものという感じがした。良い悪いっていうか、そもそも方向性自体がぜんぜん違っているのだ。

バンドは3人編成。トゥリッパ・ルイスがボーカルで、弟のグスタヴォ・ルイス――彼もころころとした体型で、いかにも姉弟というルックスである――がアコースティック・ギター。で、もうひとり、マルシオ・アランチスは、ほとんどの曲でボイスパーカッションしながら楽器を弾く、というなかなか手練のベーシストで、さらにエレキギターと小さなシンセまでも使い分けるマルチプレイヤーでもあった。曲自体は、予習としてCDを聴いていたときとおおむね同じ印象で、ブラジル産のインディー・ポップというところ。どれもちょっぴりひねりが効いていて、軽やかで陽性なところがよかった。

個人的なハイライトは、曲の展開部で怪鳥のような金切り声が連発される、”Like This”。「アアアアアアアアアアアア〜!」って強烈なシャウトを決めた直後にふつうの歌声に戻るところなんて、何回聴いてもおかしくって。これはトゥリッパ的にも押しの一曲であったらしく、アンコールでも演奏してくれた。


『エリス・レジーナ~ブラジル史上最高の歌手』

渋谷ユーロスペースにて。ドキュメンタリーというより、ライブ映像といった方が近いような作品だった。テレビのスタジオライブの合間に、エリスが自分の身の上や曲の作曲者についてあれこれおしゃべりをするのだ。カメラは彼女の顔のアップかピアノの鍵盤くらいしか映さないので、映像的にはおもしろいところはほとんどないのだけれど、とにかく演奏はクールでグルーヴィ、ボーカルは譜割りを崩して自在にフェイクを入れまくり、っていうきわめてハイレベルなライブを聴かせてくれるので、興味がある人なら、それだけでもじゅうぶん満足できるだろう。

バンドの編成は、ピアノトリオ+ボーカルの4人。ピアノのセーザル・カマルゴ・マリアーノ、ドラムのパウリーニョ・ブラガ、ベースのルイザォン・マイア、そしてボーカルのエリス・へジーナ。まさにエリス黄金期のメンバーって感じだ(それだけに、バンド全体のようすがぜんぜん映らないのはもったいないなーとおもう)。曲も全部で17曲とたっぷりだし、合間にはトム・ジョビンやミルトンやジルベルト・ジルの人となりについてエリスが好き勝手にいろいろしゃべったりするし――んー、あの人はね、いい人よ!いい人っていうのはね、ちゃんと目を見て話せる人のこと。最近では、そういう人が少なくなってしまったけど――で、なかなか飽きさせない。この映像が撮影されたのは1973年なので、当時エリスは28歳。ベリーショートがキュートで、ポジティブなオーラが全開になっている感じがすばらしかった。


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