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Bernd Glemser / Stanisław Skrowaczewski: 読売日本交響楽団@東京芸術劇場

Bernd Glemser Stanisław Skrowaczewski

10月4日、池袋芸劇にて、スクロヴァチェフスキ/読響のコンサート。スクロヴァチェフスキは、舞台袖から指揮台まで歩いてくるようすを見ている限りでは、ちょっと不安になってしまうくらいのじいちゃんだったけれど、非常に精密かつパワフルな演奏を作り出していく指揮者だった。ソリストのベルント・グレムザーは、端正でかっちりとしたピアノを弾く人、という印象だったかな。以下、曲ごとの簡単な感想。

  • ショパン:ピアノ協奏曲第1番
  • グレムザーのピアノは非常に堂々としていて、かなり余裕をもって弾いている感じだったし、音のひとつひとつも清廉というか粒の立ったというか、まあそういう感じの美しいものだったのだけれど、なんだかあまり胸に響いてこなかった。確かにいい演奏だったとはおもうので、いまいちぐっとこなかったのは、たぶん俺が曲をしっかり把握できていないせいだろうという気がする。残念。まあ、ショパンってちゃんと聴いたことないもんなー、これから勉強してみよう…。アンコールは、ラフマニノフの“前奏曲 作品32-12 嬰ト短調”。

  • ショスタコーヴィチ:交響曲第5番
  • 重厚で、派手で輝かしくて、鋼のように研ぎ澄まされていて、曖昧さや無駄なところがなくて、しっかりとした計算によってフルオーケストラのパワーが全開にされている、という感じの、まあはっきり言って非の打ち所のないショス5だった。90歳のじいちゃんの指揮とはおもえないくらい、全体的に精緻で、かゆいところに手の届く、きっちりとした意図というか、かなり強い意志を感じさせる演奏になっていた。「詩的」とか「味わい深い」とか「老成した」とかいうタイプではぜんぜんない。とくに印象深かったのは、3楽章の静謐な美しさと、あと、4楽章のコーダでぐううーってものすごいリットをかけたところ。これは文句なしにかっこよかった。

Chopin: Piano Concerto No. 1 in E minor, Op. 11
Shostakovich: Symphony No. 5 in D minor, Op. 47


Hilary Hahn@横浜みなとみらいホール

Hilary Hahn@横浜みなとみらいホール

ヒラリー・ハーンのバイオリンといえば、そのずば抜けたテクニックのもたらす安定感はもちろん、それに加えて「知的」で「冷静」で「意図が明確」な感じにすごく惹かれるのだけど、そういう演奏っていうのは、すごく「自然」に聴こえるものなんだなー、ということを実感できた演奏会だった。今回のプログラムは、委嘱作品の小品6作を中心とし、それらの間にモーツァルトとフォーレのソナタ、バッハのシャコンヌ(パルティータの2番)を挟み込む、というちょっと変わった構成。委嘱作品たち――その多くは、いわゆる「現代音楽」な感じのハードな作風だった――もそれ以外の曲も、どれもごく自然な、気取りのない音が鳴らされていたようにおもう。

とくに印象深かったのは、終盤のフォーレのソナタと、シルヴェストロフの”Two Pieces”という作品。どちらも夢見るように叙情的というか、まあ言ってみればわかりやすくロマンティックな作風だったのだけど、これらの曲のドラマ性を過剰にアピールするのではなく、あくまでも端正かつ抑制を効かせた響きで聴かせる、っていうその塩梅がとにかくかっこよくて。やっぱりハーンは、こういうリリカルな曲を精密に弾くところが素敵なんだよなーとおもった。シャコンヌも、魂の熱演、みたいな大仰なところはぜんぜんないし、あっさりしていると言っても間違いではないくらいクールな演奏ではあるものの、それによって曲全体の構成に意識を向けられるようなところがあって、そっか、こういう風にも聴けるんだな、というような発見があった。ただ、個人的にはバッハが好きなので、もっと他の曲もいろいろ聴かせてくださいよー!とはおもった。

シャコンヌ以外の曲は、どれもピアノとのデュオによる演奏。共演のピアノはコリー・スマイスという人(即興演奏とかが得意らしい)で、彼もすごくよかった。ハーンと似たような、理知的でコントロールの行き届いた演奏をする人だなーという印象で、とくにモーツァルトの伴奏のシルクのような繊細さにはうっとりさせられてしまった。

プログラムは以下の通り。

Antón García Abril: “First Sigh” from “Three Sighs”
David Lang: “Light Moving”
Mozart: Sonata for Violin and Piano in E-flat Major, K.302
大島ミチル: “Memories”
J.S.Bach: Chaconne from Partita for Solo Violin No.2 in D Minor, BWV 1004

 *

Richard Barrett: “Shade”
Elliott Sharp: “Storm of the Eye”
Fauré: Sonata No.1 for Violin and Piano in A Major, Op.13
Valentin Silvestrov: Two Pieces for Violin and Piano

 *

James Newton Haward: “133…At least”
David Del Tredic: “Farewell”


Hilary Hahn / Esa-Pekka Salonen: The Philharmonia Orchestra@東京芸術劇場

エサ=ペッカ・サロネン ヒラリー・ハーン

5月30日、池袋は東京芸術劇場にて、エサ=ペッカ・サロネン/フィルハーモニア管のコンサート。今度ウィーンフィルと来日することにもなっているサロネンは、最近かなり注目の指揮者だし、何より、俺にとっては高校生の頃からいちばん好きなバイオリニストである、ヒラリー・ハーンがソリスト!ってことで、かなり気合いを入れて会場に向かったわけだけど、さすがというかやはりというか、彼らは期待以上の演奏を聴かせてくれた。

  • へリックス/サロネン
  • 前プロは、サロネン作曲の『へリックス』。現代音楽にしてはかなりキャッチーで聴きやすい曲。…っていうか、そのくらいの印象しか残ってないや…。

  • バイオリン協奏曲/チャイコフスキー
  • 中プロが、ヒラリー・ハーンをソロに迎えた、チャイコフスキーのバイオリンコンチェルト。先日出たハーンの新作を聴いていたから予想はついていたものの、はっきり言って、こんなに冷静で精密なチャイコンは聴いたことがない!ってくらい、落ち着いてていねいに演奏されたチャイコンだった。もともと、サロネンもハーンも、音符がくっきりと見えてきそうな演奏をするタイプだとおもうけれど、これはなんていうか、世にはびこるパッション爆発系のチャイコンをクールに流し斬りするような演奏で、緊張感が凄まじい。凄まじいのだけど、当のハーンはじつに軽やかに弾いていて、とにかくかっこいいんだ。第一楽章頭のソロから、ぐんぐんに引き込まれてしまった。

    ヒラリー・ハーンって、演奏技術の安定っぷりがすごいのはわかるけどさ、心は動かされないんだよね…みたいなことをときどき言われたりしている気がするけれど、いや、やっぱりこんな風に端正で精緻で、明確な意図でもって曲が推進していくのを感じさせる演奏には、感動しないわけにはいかないわー、と俺はおもった。まったく土の匂いのしないチャイコン、抑制のきいた優雅なチャイコン。こういうチャイコンもアリなんだなー、って目を開かされたみたいな感じだった。

    ちなみに、アンコールはバッハのサラバンド。これはもう、会場にいた誰もがうっとりと聴き惚れていたに決まっているのであって、俺としても、最高だったとしか言いようがない。

  • 交響曲第2番/シベリウス
  • メインはシベリウスの2番。全体の音の処理がとにかく精密だし、薄霧のような広がりを持った弦パートや、まろやかに溶け合った感じの金管の音色がすごくよくて、あー、本当にうまいオケなんだなあ、なんてあたりまえのことをおもった。正直言うと、シベ2ってとくに好きな曲ではないのだけれど、サロネンの指揮に引っ張られるようにして、かなりおもしろく聴けてしまった気がする。チャイコンでロシア臭が消されていたのと同様に、北欧っぽいロマンティックさは抑えめでありつつも、今度は音量の幅の大きさを最大限に活かしきった演奏で、ちょっと変わった響きになっていたようにおもう。でもとにかく、2楽章冒頭の緊張感にはじりじりさせられたし、4楽章の突入部やエンディングでは、身体じゅうが音に包まれて毛穴という毛穴が一気に開くような、ぞくぞくするくらいの快感を味わえた。

 *

ハーンがよかったのはもちろんだけど、サロネンの指揮は想像以上にわくわくさせられた。ブルックナーとかぜったい得意そうだし、秋のウィーンフィルとの共演、お金と時間さえあれば、聴きに行きたいなー。

・サロネン ヘリックス
・チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲
 
(ソリストアンコール)
・バッハ サラバンド(無伴奏ヴァイオリン・パルティータより)
 
・シベリウス 交響曲第2番
 
(アンコール)
・シベリウス 組曲「ペレアスとメリザンド」より「メリザンドの死」
・シベリウス 組曲「カレリア」より「行進曲調で」
・シベリウス 「悲しきワルツ」

チャイコフスキー&ヒグドン:ヴァイオリン協奏曲


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