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『超高齢社会の基礎知識』/鈴木隆雄

『超高齢社会の基礎知識』/鈴木隆雄

日本の高齢者医療・保険・福祉の現状に関する概観と、超高齢社会に挑むにあたっての制度面/意識面からの問題提起が行われている一冊。タイトルの通り、「基礎知識」として誰もが認識しておくべき内容がまとめられている。

広範なテーマが扱われているけれど、全体的にきちんとしたエビデンスに基づいた議論がなされていて信頼感があるし、構成もしっかりしていて読みやすい。概要把握のためには、なかなか有用な本だと言えるんじゃないだろうか。以下、俺が興味を覚えた部分について、簡単にノートを取っておく。

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65歳以上の高齢者の割合が人口の21%以上の社会を、「超高齢社会」という。現在の日本の高齢者人口は3000万人オーバー、全人口の24.1%にあたるので、これはもう完全な「超高齢社会」というわけだ。また、今後はいわゆる「団塊の世代」が高齢者入りしてくることになるため、高齢化のスピードはますます加速していくことになる。2030年頃には高齢者人口の割合が28%となり、人類がかつて経験したことのない、「超々高齢社会」とでも呼ぶべき社会が訪れることになるはずだ。

そんな日本の高齢者医療においては、従来の「疾病予防」以上に、「生活機能の維持・向上」や、「介護予防」が重要になってくる…とはよく言われることだけれど、要支援/要介護状態に陥るリスクを予防するための具体的な方策としては、とくに「老年症候群」を早期に認知することが大切だ、と鈴木は主張している。「老年症候群」とは、たとえば以下のようなものだ。

  • 転倒
  • 単純だが、転倒は危険が大きい。大腿骨頚部骨折などの重篤な外傷の可能性があるばかりでなく、「転倒後症候群」(転倒の恐怖心が植えつけられることで、外出を控えるようになってしまったりする)が生活空間の狭小化や、QOLの低下を引き起こすことがあるからだ。

  • 低栄養
  • 地域でふつうに生活している後期高齢者の約1割は、低栄養(食の量・質の低下により、血中アルブミン濃度が低下している)の状態にあるという。食事を作ったり食べたりすることが億劫になる→低栄養になる→ますます活動性が低下する、という負のスパイラルにはまっているようなケースだ。

  • 食べこぼし・むせ
  • 口腔機能(咀嚼・嚥下)の低下により、「食べこぼし」や「むせ」が発生する。とくに睡眠中、無意識の状態で発生する「むせ」(口腔に湧き出たつばを食道でなく、誤って気道へと飲み込んでしまう)は危険性が高い。

  • 尿失禁
  • 尿失禁は、軽度のものを含めると、高齢女性の3,4割に発生するという。失禁の不安や自信の喪失は日常の外出を控えさせ、QOLの低下へと繋っていきやすい。

  • 足の変形
  • 足の変形による歩行の困難性というのも高齢者全般に多発する症状だという。骨格が低下し、偏平足や開張足になることで、外反母趾や内反小趾が発生、歩行時に足が痛むようになる。足が痛ければ、やはり外出はしにくくなるだろう。

これらはいずれも、「明確な疾病とは言えず」、「症状が致命的でなく」、「初期段階においては日常生活への障害が小さい(本人にも自覚がない)」ために、しかるべき対応がなされていなケースが多いらしい。そのため、医療機関への受診自体も少ないし、病院側での対応策にしても、あまり整っていない。

こうした現状を受けて、鈴木は、「老年症候群」のサインを早めに発見し、確実に予防対策を取るためには――個々人が自分自身の身体の発するサインに気をつける、というのはもちろんだが――定期的な健診を行い、それによって選定されたハイリスク高齢者に対して介入プログラムを提供するような仕組みづくりが必要だろう、と述べている。「介護予防」のための適切な検診とプログラムがあれば、要介護状態に陥るリスクを予防し、先送りすることができるだろう、というわけだ。(この介入プログラムの細かな内容やその効果についても、本書は多くのページを割いて説明している。)

他人の介護を受けずに、「ピンピンコロリ(PPK)」で大往生したい、というのは多くの人が抱く願望だろう。だが、PPK――それまでまったく元気だった者が、急病によって死亡する――の割合というのは、65歳以上の総死亡者数の3,4%でしかないのだという。かなり例外的なケースなのだ。圧倒的多数の高齢者というのは、ある時点から明らかに虚弱化し、やがて周囲の支援を必要とするように、つまり、要介護の状態になっていくことになる。

だから、現時点の日本における人生の晩年において、ある程度の要介護状態になることは必然であり、それは社会的に(というのは、介護者の側も、被介護者の側も)「そういうもの」として受け入れなくてはならない大前提だ、ということになる。超高齢社会を持続可能なものとするためには、国民全体の、医療と福祉のシステム全体に関する合意――たとえば、高齢者医療費や社会保障費、地域医療や在宅ケアなどの問題に関する、一定の合意――の形成が必要だろう、というわけだ。


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