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『キッズ・リターン』

キッズ・リターン [DVD]

早稲田松竹にて。北野武、オートバイ事故からの復帰第一作。シンプルというか、どちらかと言うと地味なくらいの脚本だけど、なんだかずっしりと心に残る映画だった。

扱われているのは、若いってことのほろ苦さや、ふいに訪れる挫折とそこからの再出発、みたいなありがちな題材なのだけど、それに対する安易な共感や憧憬のようなものを感じさせないところがいい。なんていうか、青春ものっぽいストーリーなわりに、きらきらとした希望や甘ったるさといったものがほとんどないのだ。王道のエンタテインメントなら、主人公は挫折した後にしかるべきかたちで復活し、何らかの成功や勝利に向かって突き進んでいくものだけれど、この映画にはそのような予感がまったくない。主人公たちはただ単に挫折し、しかし挫折した後もまた平凡な彼らなりの生活を続けていく他ない。それってまあごく普通のことではあるものの、やっぱり残酷なことだ。平凡であることの残酷さっていうのは、なんともリアリティがあって、胸にくる。

物語を描き出していくのは乾いて透明な、ややもすれば冷徹なくらいの視線であり、そのせいか、主演の2人――金子賢と安藤政信。当時は2人とも演技経験は少なく、素人同然だったらしい――はくっきりとした輪郭、実在感を持っているように感じられる。あーこういうやついそうだよね、って素直におもえてしまうわけで、彼らの味わうことになる、生きることの苦みもまた、ある重みを持ったものとして感じられた。そんなところがよかった。

この作品でも、音楽は久石譲。相変わらず、久石の音楽からは記号的なセンチメンタリズム以外ほとんど何も感じられないのだけれど、主人公が若者2人、ってこともあってか、物語の青さに見事にフィットしているようにおもえた。俺は久石譲の音楽がきらい、っていうよりは、彼の音楽の使われ方、受け入れられ方が気に食わないだけなのかも…。


『ソナチネ』

ソナチネ [DVD]

早稲田松竹にて。こういうのって、なんかあんまり好きなタイプじゃないんだよなーとおもいつつ見ていたのだけど、見終わってから何週間も経ったいまでも、スクリーンに映し出された海や土、火花や鮮血の美しさをくっきりとおもい出すことができるわけで、やっぱりこれはなかなかの作品だったのだろうとおもう。沖縄で、ヤクザたちがだらだらしたり、遊んだり、殺し合ったりする、ちょっとシュールでとても静かな映画。

登場人物のほとんどが死んでしまうストーリーではあるものの、死につきものの湿っぽさは可能な限り回避されているようで、乾ききった、空虚な気分ばかりが印象に残る。作中では、静けさ、唐突な死、恐怖、笑いといった要素が、奇妙な、それでいてまさにこれしかない、っていうようなバランスを保ったまま同居していて、一本筋の通った、完成度の高い作品だなーと見ていておもった。

…とはいえ、俺の好みじゃないなーとおもった原因は、まさにその完成っぷり、調和の取れっぷりにこそあったような気がしなくもない。なんていうか、全体的によくでき過ぎていて、あざといように感じられてしまったのだ。物語の設定のおもしろさ(アロハシャツを着て沖縄に向かうヤクザたち!)もスタイリッシュな映像も、ブラックなギャグも虚無的なイメージも、あまりにきちっと決まり過ぎているような印象がある。もちろん、それは作品の価値を落とすような要素ではないのだろうけど…。

あと、あざといと言えば、久石譲の音楽もそういう感じがして、いまいち好きじゃないんだよなー、と見ていて改めておもったりした。その抜群の耳触りのよさはときに安っぽくおもえてしまうし、はっきり言ってセンチメンタル過ぎる。いや、センチメンタルなのが悪いわけじゃないけど、映画のなかで流れる久石の音楽は、なんだかあまりに記号的というか、安易な感じがしてしまって。

うーん、なんだか批判的なことばかり書いてしまったけれど、決して悪い作品ではないとおもう。なんていうか、ものすごくダメな気分、何もかもが虚しくなって、もう全部全部捨てちまおうか、って気分のときに見たらものすごくしっくりくる映画なのかも、なんて気はしている。


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