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『パリ、テキサス』

パリ、テキサス [DVD]

DVDで。高校生のころにはじめて見て以来、自分のなかで最高の映画のひとつであり続けてる作品で、もう何度も何度も見ているわけだけど、ひさびさに見てもやっぱり素晴らしかった!とにかく全編通して隙がない、って言っていいくらいに映像が美しく、とても静かなのにものすごく雄弁な画ばっかりで目が離せない。言葉の少ない序盤から切なすぎる終盤のモノローグまで、どのシーンもひたすらにエモーショナルで、俺はまたしても圧倒されまくってしまった。

物語はひどくセンチメンタルで、エンディングは苦い。それだけではただのウェットな話になってしまうところなんだけど、乾燥したアメリカ中西部の空気や、空の限りない青さ、やさしい夜の光、ライ・クーダーのざらっとしたスライドギターの音色――今回はじめて気づいたんだけど、ほとんどが単音のスライドだ。ものすごくシンプル――なんかが、美しくも悲しい、はかなくも力強い、もうこれしかない、っていうような絶妙なバランスを作品にもたらしている。

ひさびさに見ておもったのは、これはある家族の崩壊と希望の物語であるわけだけど、でもやっぱりそれ以上にトラヴィスっていうひとりの男の物語なんだな、ってことだ。彼の不器用さや繊細さ、何をどうしたいのか自分でもまるでわかっていない感じ、あてのない感じ、諦めや疲労、狂おしいようなおもい、そんないろいろが画面のありとあらゆるところから滲み出てくるようで、とにかく胸に迫ってきてしょうがない。あんな壊れかけたおっさんに毎回毎回ずぶずぶと感情移入してしまうのは、もうとにかく映像の、物語の、映画の力によるものだって言うしかなくて、そうかんがえると胸が震える。

っていうか俺はこの映画のほとんど全てが大すきで、この映画を見るたびに、こんなに最高のシーンばっかりで作品が完成するなんて、ほんとに奇跡ってあるんだな…なんておもってうるうるしてしまうくらいなのだ。でも、何度見ても相変わらずすごい、って感想しか出てこないんだからしょうがない。ヴェンダースの数多い作品のなかでも、頭ひとつ飛びぬけて美しい映画。


『ランド・オブ・プレンティ』

ランド・オブ・プレンティ スペシャル・エディション [DVD]

ヴィム・ヴェンダース監督、『ランド・オブ・プレンティ』を見た。DVDで。俺はヴェンダースの映画が昔からすごくすきで、今まで見た作品のなかにハズレだとおもえるものはごく少ないのだけど、でも、正直この作品はいまいちだとおもった。

主人公の女の子は、他者に対する想像力や信頼の感情、他者の痛みへのまなざしをしっかりともっており、それが物語全体を照らす光になっている。ポジティブな感じがしていい。けれど、叔父さんの、誇大妄想的で狂信的な、所謂“アメリカの正義”を全身で体現するようなキャラクターはあまりにも類型的にすぎる、と感じた。いや、意外とじっさいあんなやつもいるのかもよ、ってことは頭ではかんがえられる。けれど、あまりにも彼によって象徴させたい、とおもわれるイメージが強く出すぎてしまっているようで、いろいろな意味でリアルさを失っているようにおもった。もちろん、彼をこういうぶっとんだキャラクターに仕立てたのは監督の思惑によるものなのだろうけど、それにしても、役割をふり当ててる感が強すぎる、というか。

9・11のテロによってトラウマを呼び覚まされたベトナム戦争の帰還兵で、監視用カメラをつけたバンには星条旗、ケータイの着メロはスター・スパングルド・バナー、って。行き過ぎなのを滑稽に見せようというのはわかるけど、ちょっとやりすぎ、とおもって、ひいてしまった。そして、叔父さんのキャラクターが単なる物語の駒であるかのようにおもえてくると、主人公の描かれ方まで、なんだか薄っぺらに感じられてきてしまって。この映画はアメリカを愛するヴェンダースが、現在のアメリカへ警鐘をならした作品だといえそうだけど、でもこの物語はやはり紋切り型に過ぎるのではないか、とおもった。

主人公が、屋上でiPodで音楽を聴きながらふらふらと踊るシーンはとても印象的。そういう部分部分では、けっこうすきなところもあった。


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