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『愛と宿命の泉 Part Ⅱ 泉のマノン』

『愛と宿命の泉 Part Ⅱ 泉のマノン』

DVDで。パート2で描かれるのは、前編から10年後の物語である。泉を手に入れ、ついに「カーネーション王」となったウゴランは、ある日、泉で水浴びをする羊飼いの娘の姿を覗き見る。娘はジャンの娘、マノンだった。その美しさにひと目で恋の虜になってしまったウゴランは、全財産を譲ってでも彼女と結婚したいと願うのだが、マノンはまるで彼の方を見ようとはしてくれない。そんな折、マノンはふとした偶然から、パペとウゴランが泉の存在を知りながら父を騙していたこと、また、村の住人たちも彼らの行いの意味するところを理解しておきながら、父のために指一本動かそうとはしなかったことを知る。怒りに震える彼女は、町の水源をせき止め、町の水をことごとく枯らしてしまうのだった…!

パート1は虚偽から始まる悲劇の物語だったが、パート2は真実の露見によって動き出す復讐の物語である。ここでついに、世代を越えた宿命、因果応報に決着がつけられるというわけだ。ひとりの娘の怒りが町の水をすべて枯らす、ってなんだかラテンアメリカ文学みたいだけれど、そういった神話的な要素がいくつも取り入れられていることで、作品全体の雰囲気は荘重なものになっている。

パート1はジャンの、パート2はマノンの視点を主軸とした物語だと言うことができるけれど、全編通しての主人公、パペとウゴランもまた、彼らと同様に愛と宿命とに絡み取られ、身動きの取れなくなった人物である。ウゴランの決して叶うことのない恋と、パペの人生の歯車を狂わせたひとつの誤解の悲しさは、この物語を単純な「善vs悪」の構図から遠ざけ、多層的な情感をもたらしている。とくにストーリー終盤からエンディングにかけてのパペの姿はひたすらに痛々しく、「運命に翻弄された」という言葉がぴったりくるような物悲しさを感じさせる。


『愛と宿命の泉 Part I フロレット家のジャン』

『愛と宿命の泉 Part I フロレット家のジャン』

DVDで。おもしろかった!パート2の『泉のマノン』と合わせてひとつの物語として完結する形になっている作品の第一部。愛と宿命によって複雑に絡まりあった人物たちが織りなす神話的で悲劇的なプロットがあり、豪華俳優陣の名演があり、そのバックには印象派の絵画のような美しい風景があり、それらを彩るゴージャスな音楽がある。タイトル(の邦訳)には重々しく古色蒼然としたところがあるけれど、実際、それに似つかわしい内実を持った映画だった。

物語の舞台は1920年代のフランス、プロヴァンス地方。兵役を終えて故郷に帰ってきたウゴランは、唯一の親族である叔父、パペの助力を得てカーネーション栽培をはじめようとする。花を育てるには水源が必要だ、ということで泉のある隣家の土地を譲ってもらおうと交渉するが、あえなく失敗、土地はフロレット家の息子、せむしのジャンに相続される。ジャンは豊かな自然のなかで農業をしようと、収税吏の仕事を辞め、妻と幼い娘を連れて村に引っ越してくる。そうだ、農業に失敗すれば、ジャンのやつも土地を手放す気になるに違いない、とかんがえるパペとウゴランは、ジャンの土地にある泉をこっそりと埋めてしまう。はじめのうちこそ順調に進んでいるかにおもわれたジャンの農業だったが、夏、例年にないほど長い日照りが続き、窮地に追い込まれていく。ウゴランたちの思惑など知るよしもないジャンは、この土地に泉があれば、と神に祈るのだったが…!

まあとにかくオーソドックスでクラシカル、変にひねったところや妙な色気はまったくない、正しくザ・ロマンといった感じの作風である。でも、物語が好きな人っていうのは、なんだかんだ言ってもこういう物語のことが好きなのだ。本作のような映画を見ていると、きっちりと構築された世界観と、そこに観客を導く適切なストーリーテリングの手法がありさえすれば、やはり物語というのは人を否応なしに惹きつける、強力な力を発揮することができるんだな、ということが実感できる。『愛と宿命の泉』のプロットには目の覚めるような斬新さはないし、各キャラクターたちの造形には類型的ところもある。いろいろとストーリーに都合のいい「偶然」が起こったりもする。けれど、作品を構成する各パーツのディテールがとにかく細かくていねいに描かれており、それらの積み重ねが大きなうねりを作り出していくのがしっかりと感じられる。ごく自然に大団円へと繋がっていくような、王道だけど、なんか文句ある?っていう、堂々たる風格があるのだ。

この作品の冒頭で登場するのはウゴランだけれど、パート1の主人公たるジャンが登場するのは、映画が始まって30分近くたってから。こんなゆったりとしたペースにも、大河ロマンの悠然とした感じが出ていて、見ていると、おお、ついに物語が動き出したよー、って盛り上がってしまう。腰をすえてどっぷりと物語世界に浸かるには、まさにぴったりの作品だった。


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