タグ ‘ エミール・クストリッツァ

『セブン・デイズ・イン・ハバナ』

渋谷ヒューマントラストシネマにて。キューバを舞台に、7人の監督が7つのエピソードを描いた短篇集映画。どのエピソードにもわりとくっきりとしたストーリーがあるところ、キューバが舞台、ってだけで、そこで扱われるテーマ自体は比較的普遍的なものばかりであるところなど、全体的に親切設計というか、ひねくれたところのない作品だとおもった。

7つの短編はどれもなかなかたのしかったのだけど、俺はやっぱりクストリッツァ監督が出演している、第2話「ジャムセッション」が好みだった。ハバナの映画祭に呼ばれたクストリッツァが、昼間からべろんべろんに酔っ払ったり、国に残してきた奥さんに何度も電話したり、車の運転手とジャムセッションで大盛り上がりしたり…。なんてことはない話だとはいえ、クストリッツァがキュートだし――いや、むさ苦しいちぢれ毛の酔っぱらいおっさんがイェーイェー言ってるだけなのだけど――とにかく、作品全体に横溢するポジティブ感が素敵だった。

他にも、アメリカからの観光客がキューバのナイトライフを初体験する話、クラブシンガーの女の子がキューバを出るべきかどうかでおもい悩む話、天啓を受けたというばあちゃんに言われるがまま、アパート総出で祭壇を作る話なんかが、ポップでよかった。


『ウェディング・ベルを鳴らせ!』

f:id:hayamonogurai:20090513205043j:image:h170

渋谷シネマライズにて。エミール・クストリッツァの新作!!ってことで、本当にむちゃくちゃ期待して見に行ったのだけど、うーん、まあまあってところだったかなー。

とはいえ、俺の場合はクストリッツァの作品に対する期待値が大きすぎるからそんな反応だったのであって、ふつうにコミカルかつハッピーな映画として十分にたのしめるし、クオリティも高い作品ではあったとおもう。でもなにしろ俺は、ちょっと他ではみられないような濃厚な猥雑さや、ありえないハイテンション、狂ったようなグルーヴ感をこそ、彼の作品には求めてやまないのだ。そういう意味において、本作はちょっとこじんまりとまとまっちゃってる感があるかなー、などとかんがえたりしたのだった。

繰り返しになるけど、出来はぜんぜん悪くない。でもでも、これだったら俺は、『黒猫・白猫』をもう一回見るほうがいいかな…。たぶんだけど、音楽の感じがちょっと期待していたのと違ったのかも。もっともっと泥臭くて田舎くさい、もっとごちゃごちゃしたサウンドトラックのほうがよかった気がする。


『ライフ・イズ・ミラクル』

ライフ・イズ・ミラクル [DVD]

DVDで。エミール・クストリッツァのこれも、大すきな映画。

舞台は1992年、ユーゴ内戦時のボスニアで、セルビア人鉄道技師のおっさんが主人公。兵役に行った息子が捕虜になるのだけど、おっさんは捕虜交換要員として連れてこられたムスリムの若い女の子と恋に落ちてしまって…!というのがストーリーの大枠で、なんていうか、メロドラマ+バルカン情勢、という感じの物語になっている。

切ない話なんだよなー、これ。ただ、切ないけれど、未来への展望みたいなものはたしかにあって、ハードな生の辛さと、それと同じくらいの生のよろこびがシリアスかつコミカルに映し出されていくところがいい。情念が人を動かすさまが、パワフルっていうかほとんど強引に描かれていくのもすごくて、とにかく勢いのある映画、ってところは他のクストリッツァ作品と同様だ。

あと、本筋とはあまり関連のなさそうな雑多な要素たちがこの映画を見ていく上ではかなり重要になっていて、それらの圧倒的な存在感こそが全体のムードを決定づけている、なんていう風にも言えるかもしれない。ボスニアの枯れた風景やたくさん現れる動物たち(ロバ、猫、にわとり、熊…)、もちろん最高の音楽やその他いろいろが混然一体となって物語の推進力を生み出していて、ぜんぜん飽きさせない。見たのは結構ひさびさだったのだけど、やっぱり夢中になってしまった。

いや、っていうか俺はクストリッツァにほとんど心酔してしまっているので、ちゃんとした感想とかは書けないような気がする。でも、とにかくこれも最高。こんなに最高最高ばっかり言ってしまう自分の語彙の貧弱さにはがっかりだけど、まあ仕方がない。サッカーのシーンとか、息子の出征前のパーティーのシーン、2人の逃避行から印象深いラストまで、クストリッツァの映画ならではの狂騒のグルーヴ、熱情があるのと同時に、自分の力ではどうにもならない物事を受け入れつつなんとかやっていくしかない、っていうような、しみじみとした、しかし力強い感覚が溢れていて、もうとにかく、すこぶる素敵な作品になっている。


『黒猫・白猫』

黒猫白猫 [DVD]

DVDで。6月のノー・スモーキング・オーケストラのライブの興奮をおもい出しつつ、久々に見る。やっぱり、すっげーいい!とにかく音楽が最高だし、人生を全力でたのしんでいる感が画面から滲みだしてくるよう、じつに素晴らしい。ドナウ川のほとりに暮らし、密輸で生計を立てている親子を中心に、そろいもそろってクレイジーなジプシーの人びとのどたばた喜劇が描かれていく。

とにかく全編通してごちゃごちゃと猥雑で、超ハイテンション。くすくすわらっちゃうようなシーンには事欠かないし、登場人物全員が(ほんとに全員が!)むやみと個性的で強烈な、でも愛すべきキャラクターで、かなり独特な濃さ、味わいを持った映画になっている。

物語の進行のなかで生まれてくるのはまさに祝祭のグルーヴとしか言いようのないもので、雑然としたエナジー、輝かしい高揚感がひたすらに高まっていく。人物たちはみな欲望をたぎらせて、狂ったように生き、狂ったように踊り、狂ったようにわらう、感情を爆発させる。ストーリーの展開、まとめかたもばっちり見事だし、元気の出る映画、テンションの上がる映画といえば、俺のなかではやっぱりこれだな。最高。


Calendar

2015年10月
« 7月    
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

Archive