『わたしを離さないで』

わたしを離さないで [DVD]

早稲田松竹にて。原作のイメージ、空気感といったものを忠実に再現した、いい映画だったとおもう。奇妙な静けさのなかで、しこりのようにただそこに在り続ける、絶望と諦念ってやつが、見事に描き出されている。物語後半はもう泣けて泣けて。これは『愛する人』との2本立てで見たのだけど、俺はすっかり涙を搾り取られてしまった。

かなり原作に忠実な本作だけれど、原作にあった、主人公たちの秘密が薄皮を一枚一枚剥がしていくようにゆっくりと明らかにされていく不気味さ、不穏なムードといったものに関しては、この映画からはほとんど抜け落ちている。なにしろ、その秘密というやつは、物語序盤のうちに簡単に明らかになってしまうのだ(これは、単にその方が物語の進行に都合がいいから、なのだとおもわれる)。そのため本作では、原作の小説の重心となっていた、主人公たちの子供時代の心情やそこに投影される淡いノスタルジアよりもむしろ、大人になった彼らの愛情や最後の時間の方が主軸になっている。まあ、小説と違うアプローチを取ること自体に問題がある訳ではないし、主演の3人――キャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーナ・ナイトレイ――が素晴らしかったので、これはこれで好きだったのだけど。ただ、自分としては、”原作を読んでいたときの感覚をおもい出して泣けた”感じがあったのも事実だった。

やっぱり、ミュージック・テープのエピソードはきちんと描いて欲しかったよなー(エンディングのキャシーの独白にも密接に関連するエピソードなので)とか、気になるところはいくつかあったにせよ、全体としてはとてもいい映画だったとおもう。落ち着いた語り口や透明感のあるグレイッシュな画面の美しさは、まさにこの物語にふさわしいものに感じられた。


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