『キッズ・オールライト』

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池袋シネ・リーブルにて。これはいい映画!ジュリアン・ムーアが出ているのでチェックしようとおもったのだけど(彼女の出演作の選び方っておもしろい)、家族ものにとことん弱い俺にとっては、まさに滋養たっぷりの作品だった。全体に暖かで、余計なシリアスさがなく、ユーモアに溢れているところがとくにいい。レズビアンのカップルと、彼女らの娘と息子、そして彼らの精子提供者(=”生物学上の父親”)である男が繰り広げる、ちょっぴりコメディちっくなホームドラマ。

子供たちの”父親”探しやその動機に重きが置かれている訳ではなく、見つかった”父親”と家族ぐるみで交流していくうちに浮き上がってくるもろもろの問題の方がストーリーの本流になっている、ってところがおもしろい。ただ、ここで浮上してくる家族内の問題、軋轢は、いかにも風変わりなこの家庭のなりたち――お母さんがふたりいて、おまけにふたりはレズビアンで――に比べて、ものすごく平凡なものだ。医者のニックはいわゆる古いタイプの父親役で煙たがられがちだし、パートナーのジュールスが抱いている劣等感や不満は専業主婦のそれと変わらない。優等生然とした娘のジョニは大学進学で窮屈な家を出ていけることにせいせいしているようだし、息子のレイザーはちょっとした反抗期に突入中…って、ごくごく普通。”生物学上の父親”たるポールの問題にしても、気ままなボヘミアン暮らしを送る、自由で”クール”な独身貴族のはずが、子供たちや母親たちと出会ったことで、あたかも自分の家庭を手に入れたかのように錯覚してしまい…と、これまたかなりありきたりな展開だ。

でも、そんな平凡さ、ありきたりな感覚こそがこういう物語では重要なのだとおもう。物語の結末にしても、みんなで時間をかけて少しずつ作り上げてきた家族ってやっぱり素晴らしいよね、大切だよね、ってな具合である本作は、全編を通してひたすらふつうな問題をふつうに扱っているだけなのだけど、まさにそここそが作品としての美点になっている。家族ものの映画が輝きを放ち、観客の共感を呼ぶポイントのひとつには、その家族の内包する平凡さというか普遍性というか、そういったところから生じる、たしかなリアリティの感覚というものがあるだろうと俺はかんがえているのだけど、『キッズ・オールライト』にはその感覚が横溢していたようにおもう。まあとにかく自分としては、とても好きな作品だった。

あ、あと、家族4人とポールの5人が揃ったディナーの席で、ニックがいきなりジョニ・ミッチェルの”All I Want”を歌いだすシーンがあるんだけど、ここの可笑しさはちょっと凄いとおもった。こういう微妙な家族内の空気を見事に描き出しているというその一点だけでも、この映画は素晴らしい作品だと言っていいような気さえする。登場人物たちの小さな弱みや癖、人に触れられたくないポイントなんかの扱い方がいつもとても繊細で、そういう姿勢が物語のリアリティを強固なものにしているように感じられた。


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