『きみに読む物語』

きみに読む物語 スタンダード・エディション [DVD]

早稲田松竹にて。これは正統派で甘あまなラブストーリーだなー、いまの自分にはちょっと味が濃すぎたかなー、なんて、見た直後にはおもっていたのだったけど、『私の中のあなた』の感想を書いているあいだにかんがえがちょっと変わった。これも、どうしても譲れない一線とそこで湧き上がる感情の激しさ、ってものを扱った物語なのだ。

どうしても譲れない一線。他人から見たらどんなに筋の通らない、まるで論理立っていないようなことでも、本人にとってはどうしたってこの答えしかあり得ないんだ、っていうような問題に、人はあるとき遭遇する。そこで発せられる想いはどんなものよりも強く頑なで、だからもちろん、周囲の人たちを傷つけたり、困惑させたりする。強くて純粋な想いというやつは美しいけれど、周囲を否応なしに巻き込んでは大きくなっていってしまう竜巻のような、危険なものでもある。

この作品で扱われているのは、初恋のときの鮮烈な感情の持続と断絶、そしてその幸運な再生だ。互いの自我と自我とをぶつけ合ったり、それらが不意にひとつに溶け合ったりするような激しい恋愛のシーンにおいては、そんな互いの譲れない想い、譲れない一線がおもいっきりあからさまになる。なにしろ、どうしても譲れないもの、その人をその人たらしめているものだ。妥協の余地というものがまったく存在しない。自分の気持ちに嘘はつけないの!ってやつだ。

だから物語は、必然的にロマンチックでどこかご都合主義的で、一途で身勝手なものになっていくことになる。なんていうか、そういう感情のぶつかり合い、感情のほとばしりを丁寧に映し出していくのっていいよなー(家を完成させた後の、ノアの目の虚ろなことといったら!)、なんて俺はおもったりしたのだった。

ストーリーの展開としては、身分違いの初恋パートと彼らの老後パートとが交互に描かれる形になっているのだけど、ふたつのパートの時間配分が微妙で、いちばん切なくなるべき老後パートのクライマックスでいまいち盛り上がりきらない感じがしないでもなかった。とはいえ、ここは、全体をハリウッド風にまとめる、っていう狙いありきで初恋パートに比重を置いてきたんだろうな、という印象もある。老後パートをもっとリアルに描き込んだら、重たいテーマの、ハードな映画にすることだってできたはずだ。『私のなかのあなた』でも感じたことだったけど、監督のニック・カサヴェテスは、そのあたりの焦点の定め方、バランス感覚に優れているのだろう。ヘビーな部分は、王道のラブストーリーにちょっとひとひねり加えてみた、って程度に押さえて、安心して物語に浸れるような作品に仕上げている。

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