『リリイ・シュシュのすべて』

リリイ・シュシュのすべて 通常版 [DVD]

DVDで。この映画で描かれているのは、思春期のころのやたらと繊細で、かつ激しい感情だ。ガラスのような、ってすごいださい比喩だとおもうけど、でもほんとにそんな感じ。割れたら、指とか切れて血がでちゃいそうな。岩井俊二監督ってもうとっくにオッサンだとおもうけど、こんな少年みたいなきもちを心のどこかにずうっと保ちつづけていたのだろうか。なんかちょっとこわいかも、とかおもってしまう。でも、すごく繊細で、もう既に自分の感性から消え去った(去りつつある?)なにかが、この映画にはぎうぎうに詰まっているような気がして、だからこの映画を見ていて胸が痛くなった。

リリイ・シュシュは徹底的にフェイクな存在として描かれているように俺は感じたんだけど、その存在の薄っぺらさや安さが、中学生が縋る対象としてすごくリアルだとおもった。人が頼りたくなるのは何もその対象が高尚だからじゃない。リリイという存在のフェイクっぽさを理解していながらも、そこになにか救いのようなものを求めようとするきもちは決して嘘じゃなくて、切実なものだ。そこでは、他人の欲望の目線が自分の欲望のなかにおりこまれている、ということがいえるかもしれないし、もちろん他人とのつながりを求める心だってあるだろう。主人公たちがネットに書きこむことばは、リリイと同様に薄く、安っぽく、ちょっと神経症気味で、でもそこが無防備でほんとうにリアルに感じられた。

ノスタルジアただよう、異様なくらいうつくしい映像も、それはやっぱり主人公たちの心象とあわせてうつくしいと感じられるのだけれど、決して高尚なうつくしさじゃなくて、わかりやすい紋切り型的な状況や風景(田園風景とか、海のシーンとか、凧揚げのシーンとか、どれもいわゆるきれいな風景ですね、っていう)だからこそ響いてくるものがあるようにおもえた。平凡な限界を持った、あらかじめ同意されたリアリティを内包した映像美。そこにノスタルジアを感じるような気がする。そして市原隼人や蒼井優の演技は眩しすぎる。ああ、中学生だなー、なんて映画を見ながら何度もおもっていた。ばかみたいだけど。

物語そのものは、グロテスクでもあるのだけど、ひどく繊細でうつくしい。本当いい映画だとおもう。学校ってすごいハードなところだったんだなー、とか、しみじみしてしまった。

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