『煙か土か食い物』/舞城王太郎

煙か土か食い物 (講談社ノベルス)

ひさしぶりに舞城王太郎のデビュー作を読み返していたのだけど、やっぱりすっげーおもしろいな!とおもった。とにかく無敵で行く手を阻むもの全てを吹っ飛ばしていく魅力的なキャラクターと、その内言を圧倒的な勢いで繰り出していく饒舌過ぎる文体が最高だ。

物語の主軸には、いちおう事件やミステリ的ないろいろがあるものの、整合性・論理性などといったまだるっこしい要素はとことんまで排除され、結果、物語は素晴らしいほどの読みやすさとドライブ感とを獲得している。とにかくぶっ飛んでいて爽快な小説。

そんななかで印象に残るのは、とにかく執拗に描かれる奈津川一家の内輪揉め、葛藤だろう。血と暴力によってぐちゃぐちゃに塗ったくられた一族の肖像が、これでもかってくらい血みどろちんがいな展開のなかで不気味な輝きを見せる。描かれるのはもうひたすらに暴力暴力また暴力、って感じなのだけど、過激過ぎなバイオレンスの描写からはある種の聖性みたいなものが感じられないでもない。

とはいえ、なんだかんだで俺がいちばんぐっときてしまうのは、主人公の四郎が直接的に感情を吐露してしまうところのような気がする。

ヘイ、オールアイニードイズサムインティマシー。ファックに用はない。/俺の性欲は処理させるためのもので、例えば愛の証であったり愛を確かめ合う手段だったりましてや家族を作るためのものであったりはしない。クソ、でも俺は本当は親密さがほしいんだ、全てを預けてしまえるような種類の親密さが。これまで持ってきて作ってきて溜め込んできたものを一度に全部投げ出してしまっても平気の余裕の楽勝の親密さがほしいんだ。揉んだり吸ったりするためだけのものじゃない女の胸。大きさなんて関係ないと思うような胸。ただ俺の頭を優しく埋めてくれさえすればいい。薄くったって厚くったっていい。暖かければいいんだ。俺はその胸に頭を載せてゆっくりと眠りたい。守られて眠りたい。

ああ俺は苦痛に負けそうなんだ。弱気になってる。何だよ誰かに守られたいって。誰かの胸で眠りたいって。お前は傷ついた少年か。保護の必要な未成年か。お乳の吸い足りないママズボーイか。しゃんとしろこの野郎。目を開けろ。苦痛はお前を苦しめはするが殺しはしない。苦痛は確かにあるがそれから逃れることは今のところできない。ゆっくり休みたければ仕事を済ませてしまえよコックサッカー。ドントビッチアバウトエヴリシング。ドント・ビッチ・アバウト・エヴリシング!(p.289,290)

まっすぐで素直で切実で。そんな自分に自分ですぐつっこみを入れているのだけど、こういうところが俺は一番すきかな。だって自分にはこんなまっすぐさ、正直さがどうしても欠けている気がしてならないから。

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