『「星の王子さま」物語』/稲垣直樹

『「星の王子さま」物語』/稲垣直樹

前回前々回のエントリで取り上げた『星の王子さま』解説本はどちらも物足りなかったので、図書館からさらに5,6冊、同系統の本を借りて来て、ひと通り読んでみた(今年のGWは、ほとんどこれで終わってしまった…)。基本的にどの本でも、「作品の書かれた背景」、「作中で利用されている技法」、「メタファーの解説」、「扱れているテーマとその受容のなされ方」、「サン=テグジュペリの他作品との比較」などといった内容が扱われていたのだけれど、これは!っていうような提言のなされているものはほとんどなかったし、そもそもテキスト読解自体が粗雑なものも結構多く、はっきり言って質の低いものが多いように感じられた(なかには、読者をなめてるだろこれ、というようなレベルの本もあった)。また、全体的な傾向として、伝記的事実に依拠し過ぎな作品読解が多いようにもおもえた。うーん、残念。

まあそういうわけで、読んだ量のわりに得るところのあまりなかった『星の王子さま』解説本たちだったけれど、この『「星の王子さま」物語』は情報がぎゅぎゅっと凝縮してまとめられているところが素晴らしいし、新書だから値段も安いしで、どれか一冊だけということなら、ひとまずこれがおすすめと言えるのではないかとおもう。

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本書は、平凡社ライブラリーで『星の王子さま』の新訳を出している稲垣直樹による、『星の王子さま』とサン=テグジュペリに関する解説本だ。『星の王子さま』本体に関する分析はもちろん、サン=テグジュペリに関する伝記的事実、その他の長編作品に関する考察なんかもひと通り行われているし、基礎知識を得るためにはじゅうぶんな一冊になっている。ひとまず、『星の王子さま』周辺の情報をざっと知りたい、ということであれば、本書はそれに相応しいだろう。(特に、第四章「文体とナレーションの技法」では、原典”Le Petit Prince”の文章における時制の特徴について詳細な解説がなされており、内容が濃い。)

他の解説本にまったく登場しない独特な内容としては、おまけのようにつけ加えられた感じの、第十一章「日本へのインパクト」が挙げられる。ここで稲垣はごくあっさりとではあるが、サン=テグジュペリ及び『星の王子さま』の宮崎駿への影響について語っており、なかなか興味深かった。

たとえば、『天空の城ラピュタ』のエンディングテーマ、”君をのせて”の歌詞(宮崎駿が書いている)が、『星の王子さま』を想起させる、なんて話。

「あの地平線 輝くのは どこかにきみを かくしているから」
「たくさんの灯が なつかしいのは あのどれかひとつに きみがいるから」

『星の王子さま』を読んだ人なら、おお、言われてみればたしかに!影響っていうか、もうそのままじゃんね!っておもえるだろう。

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