『老人と海』/アーネスト・ヘミングウェイ

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なんとなくヘミングウェイの文章が読みたくなって、実家から持ってきた文庫を開いた。もともとは親父の本なのだけど、妙なところに鉛筆で線が引いてあったりなんかして、ちょっとたのしい読書だった。

文章はあくまでもハードボイルドで、つまり登場人物が自分の内面を延々と語ってみたり、思索的な内容が直接に書かれたりすることはない。主人公である老人、サンチャゴのひとりごとや心理描写もごくシンプル。思考や感情をぐるぐると回してみせたり、言い訳がましいことを書いたり、っていうようなことも、もちろんない。とはいえ、それは叙情性、ウェットなところを引き立てるためのドライさである、っていうような部分は当然あって、だから時折見られるセンチメンタルな文章は独自の輝きを見せることになる。

とにかく風はおれの友だちだ、とかれは思う。そのあとで、かれはつけくわえる、ときによりけりだがな。大きな海、そこにはおれたちの友だちもいれば敵もいる。ああ、ベッドというものがあったっけ、とかれは思う。ベッドはおれの友だちだ。そうだ、ベッド、とかれは思う。ベッドってのはたいしたもんだ。打ちのめされるというのも気楽なものだな、とかれは思う、こんなに気楽なものとは知らなかった。それにしても、お前を打ちのめしたものはなんだ。

「そんなものはない」かれは大声でいった、「おれはただ遠出をしすぎただけだ」(p.110)

そうだな、打ちのめされるのなんて気楽なもんだよな、と俺もおもう。あと、ベッドってのがたいしたものだ、ってところにも強く賛同したい。

まあ、ものすごくすきな小説ってほどでもないんだけど、やっぱり上手いよなー、とは何度もおもわされた。巨大カジキと対峙するシーン、帰りみちのやるせない感じもちろんすごいんだけど、最初と最後のサンチャゴとマノーリンとの会話の場面が効いてるんだよなー。サンチャゴが海の上でひとり、「あの子がいたらなあ」、「あの子がついていてくれたらなあ」ってマノーリンのことをおもってひとりごちる場面がくる度に、俺はいちいち胸が締めつけられるような心地になっていた。そうだ、あの子がいてくれたら。あの子さえここにいてくれたら。

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    • hatooon
    • 2009-07/01 12:22am

    こんばんは。
    映画「レスラー」でヘミングウェイのことが描かれていて、わたしも再読してみようと思っていたところでした。hayamonoguraiさんの日記で火がつきましたので明日買います。最後の部分とても素晴らしかった!

    • 岩崎ぜみ☆ゆい
    • 2009-07/01 1:40am

    わたしもヘミングウェイって好きじゃなかったけど、この間移動祝祭日って本を読んで見直しちゃった。
    今度語ろう~☆

  1. hatooonさん>こんばんは。そっかあ、『レスラー』にはヘミングウェイのことが出てくるんですねー。すごく評判のいい映画だし、今度見に行ってみたいとおもいます。わーい、ありがとうございます!!

    ゆいちゃん>ひさしぶり!『移動祝祭日』ってたしかパリが舞台の話だよね?俺も読んでみるー。そだね、積もる話もしたいし、ぜひぜひ近いうち語ろう~!

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