『愛と宿命の泉 Part I フロレット家のジャン』

『愛と宿命の泉 Part I フロレット家のジャン』

DVDで。おもしろかった!パート2の『泉のマノン』と合わせてひとつの物語として完結する形になっている作品の第一部。愛と宿命によって複雑に絡まりあった人物たちが織りなす神話的で悲劇的なプロットがあり、豪華俳優陣の名演があり、そのバックには印象派の絵画のような美しい風景があり、それらを彩るゴージャスな音楽がある。タイトル(の邦訳)には重々しく古色蒼然としたところがあるけれど、実際、それに似つかわしい内実を持った映画だった。

物語の舞台は1920年代のフランス、プロヴァンス地方。兵役を終えて故郷に帰ってきたウゴランは、唯一の親族である叔父、パペの助力を得てカーネーション栽培をはじめようとする。花を育てるには水源が必要だ、ということで泉のある隣家の土地を譲ってもらおうと交渉するが、あえなく失敗、土地はフロレット家の息子、せむしのジャンに相続される。ジャンは豊かな自然のなかで農業をしようと、収税吏の仕事を辞め、妻と幼い娘を連れて村に引っ越してくる。そうだ、農業に失敗すれば、ジャンのやつも土地を手放す気になるに違いない、とかんがえるパペとウゴランは、ジャンの土地にある泉をこっそりと埋めてしまう。はじめのうちこそ順調に進んでいるかにおもわれたジャンの農業だったが、夏、例年にないほど長い日照りが続き、窮地に追い込まれていく。ウゴランたちの思惑など知るよしもないジャンは、この土地に泉があれば、と神に祈るのだったが…!

まあとにかくオーソドックスでクラシカル、変にひねったところや妙な色気はまったくない、正しくザ・ロマンといった感じの作風である。でも、物語が好きな人っていうのは、なんだかんだ言ってもこういう物語のことが好きなのだ。本作のような映画を見ていると、きっちりと構築された世界観と、そこに観客を導く適切なストーリーテリングの手法がありさえすれば、やはり物語というのは人を否応なしに惹きつける、強力な力を発揮することができるんだな、ということが実感できる。『愛と宿命の泉』のプロットには目の覚めるような斬新さはないし、各キャラクターたちの造形には類型的ところもある。いろいろとストーリーに都合のいい「偶然」が起こったりもする。けれど、作品を構成する各パーツのディテールがとにかく細かくていねいに描かれており、それらの積み重ねが大きなうねりを作り出していくのがしっかりと感じられる。ごく自然に大団円へと繋がっていくような、王道だけど、なんか文句ある?っていう、堂々たる風格があるのだ。

この作品の冒頭で登場するのはウゴランだけれど、パート1の主人公たるジャンが登場するのは、映画が始まって30分近くたってから。こんなゆったりとしたペースにも、大河ロマンの悠然とした感じが出ていて、見ていると、おお、ついに物語が動き出したよー、って盛り上がってしまう。腰をすえてどっぷりと物語世界に浸かるには、まさにぴったりの作品だった。

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