『トウキョウソナタ』

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恵比寿ガーデンシネマにて。うん、評判通りおもしろかった!いまの東京における平凡な一家族の崩壊とその後のごくかすかな再生の兆しを描く、って感じの作品。

まず脚本がいいし、香川照之をはじめとする役者陣の演技も光っている映画だったとおもうけど、それと同じくらい、映像がことばを持っている映画だとも感じた。なんていうか、メタファーの用いられ方が妙に露骨で、わざとらしい(ハローワークに並ぶ人々の長い列、車の屋根、「国境」、浜辺で見る朝日…)。それは鼻につかなくもないのだけれど、でも、そのわざとらしさこそが作品独自のリアリティに結びついているようにおもえた。

作品世界のなかでは、いわゆるリアルな現実世界っぽい描写と、おもわず、いやいや、それはないでしょ、って言いたくなるようなフリーキーな描写とがないまぜになっている。たとえば、リストラされた父親が必死に体面をつくろおうとする気持ちはすごくリアルだけど、映画後半の物語のぶっ飛び具合(←なんていうか、そんな風にしか言いようがない…)はいわゆるリアルさとは違う。そういう両極なものが平然といっしょくたになっているところがおもしろいし、むしろ、世界ってそもそも“いわゆるリアル”も“いわゆる非リアル”もどっちも内包したものなんだよな、ってことをかんがえさせられる。

映画ラストのピアノのシーン、ここは本当にうつくしい、っておもえるところだけど、でもここにもどこか不自然な感じ、あるいは、映画的な意図をあまりにもあからさまにしているような感じがある。一度は崩壊した家族が、また新たな関係性をとり結んでいく、そのかすかな希望の光としてこのピアノのシーンは置かれているわけで、だからそこには切実さ、張りつめたうつくしさがある。でも、それと同時に、その感情をどこか相対化するような(冷めた視線で見るような?)奇妙さや滑稽さ、計算高さみたいなものも同居しているように感じられて。なんていうか、そのあたりが独特の豊かさを生み出しているようにおもった。

あと、いちばんわらったのは、お兄ちゃんがいきなり米軍に入隊しちゃう、ってところ。その唐突さ!しかも結局家族のもとには戻ってこない、ってところも素晴らしい。


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