『学び続ける力』/池上彰

『学び続ける力』/池上彰

ニュース解説の尋常でないわかりやすさでおなじみ、池上彰による、学ぶことに関するエッセイ。池上がいままでどんな風に勉強してきたのか、また、あのわかりやすい解説が生み出されるまで、彼の頭のなかではどんな思考が展開されているのかなどについて、やさしい筆致で書かれている。

内容的にとくに新味のある本ではないのだけど、池上のやってきたこと、心がけていること、というのがかなりオーソドックスであることには驚かされた。もちろん、アナウンサーとしての仕事をしながら英語や経済や法律をせっせと勉強するなど、彼が常人以上の努力を積み重ねてきているってことは確かなのだけれど、でも、その努力の内容にはとくに独特な/斬新なところはなく、何というか、ごくごくふつうなことばかりなのだ。ま、学問に王道なし、ってことだろうか。

しかし、そんな池上の”ふつうさ”から感じられるのは、彼の凡庸さというより、むしろ、彼の非凡さだ。本書では、「XXの発言を聴いて、私は~と思いました」という形式の文章がずいぶん目につくのだけど、池上は、東工大の学生たちの反応、テレビ・ラジオのニュースやバラエティ番組における共演者たちの発言などを繰り返し取り上げ、彼らの反応や発言の原因となる要素を毎回きちっと探っていっている。そういう態度を見ていると、あー、この人は、相手の思考について絶えず想像力を働かせ、そのロジックを把握した上で、どのように伝えるべきかってことをかんがえているから、ああいう解説ができるんだな…なんて、なんだか納得してしまうのだ。池上の解説の明快さは、彼の特殊な分析能力によるものというより、彼の思考のていねいさ、彼の”相手に伝わっていることを重視する姿勢”から生じているんだな、っていう、あたりまえといえばあたりまえのことが、なんとなく腑に落ちたような気分になる、そんな一冊だった。

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