『花とアリス』

花とアリス 特別版 [DVD]

岩井俊二監督、『花とアリス』を見た。DVDで。花とアリスの恋やそれにからみつく嘘、芝居、アリスが宮本をつれて父親とのおもいでを辿るシークエンス、花のシリアスな告白と下品な落語との落差、宮本が海岸で拾うハートのエース、すべてのストーリーやシチュエーションがいかにもつくりものじみていて、安っぽく、薄っぺらく、また、同時にひどくきれいでもある。この物語は、ある種のファンタジーだといえるだろう。そんな日常のなかのファンタジー性をつよく呼びさます、独特の幻想的な映像は、やはりとてもうつくしいけれど、うすっぺらな寓意がほの見えている。

しかし人の生とは、あるいはこの世界とは、そのようなところなのだ。人はそんな安く、うすい生のなかで、人をすきになったり、いいことやわるいことをし、みじめな気分になったり、よりよく生きたいと願ったりする。そんな安さや薄さのなかにこそ、うつくしさがある。それは安く、薄っぺらなものであるがゆえに、はかなく、だからこそうつくしい。

物語のクライマックス、花やアリスがそれら安さや薄さからいったん離れ、小細工や遠まわしないいかたではない、手の内を見せた告白をしなければならない場面がおとずれる。そこでは、今まで隠しに隠してきた自分の持ち札をすべてさらけだして、相手と対峙しなければならない。なんとか相手の領域にはいっていって伝えようとする、懸命なおもいは、繊細だが、切実なものだ。そこには、彼女たちの切実さゆえに、うつくしさがある。状況や展開の安っぽさと関係なしに、単にうつくしさとして伝わってくる力強さがある。

人間なんて薄っぺらい。ぺらぺらだ。けれど、そんななかでもがき、その人なりに必死に生きるところに、人間のうつくしさはある。あるいは、そんななかにしか、うつくしさは存在しない。なんとなく、そんなことをおもった。

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